1-2.体系を理解しよう!
文 型その1;基本の型
名詞文の作り方
下記のように、名詞を二つ並べる。
僕はヒロシだ。 |
君は学生か? |
僕は学生ではない。 |
Я Хиро́ши. | Ты студе́нт? | Я не студе́нт. |
疑問文は疑問の焦点となる単語のアクセント部分の声のトーンを上げる。(語尾を上げるのではない)。
否定するときは否定したい語の直前に не をつける。
動詞文の作り方
下のように、主語の後に動詞、続けて目的語を並べるのが基本。
僕は君を愛している。 | 君は僕を愛しているか? | 君は僕を愛していない。 |
Я люблю́ тебя́. | Ты лю́бишь меня́? | Ты не лю́бишь меня́. |
動詞は、主語の人称・性・数で変化する。
主語が一人称なら люблю 、二人称なら любишь のように語尾が変わる。
疑問文は、強調したい単語のアクセント部分のトーンを高くして言う。
否定文は、動詞の直前に не をつける。
・(僕は)君を愛している。 |
Люблю́ тебя́. |
・主語は、状況で察しがつくときは省くことができる。人称変化である程度わかるため。
・語順は、ある程度変えることができる。名詞の変化形でどんな「格」なのかがわかるため。
格;6つの格
格とは何か?
まず、格とその変化がどのようなものかを、下の表の「君」に注目して考えて欲しい。
君はお金を愛している。 |
Ты лю́бишь де́нег. | 「君」の主格形 ты |
僕は君を愛している。 |
Я люблю́ тебя́. | 「君」の対格形 тебя́ |
僕は君にお金をあげる。 |
Я да́м тебе́ де́нег. | 「君」の与格形 тебе́ |
君にはお金がある。 |
У тебя́ е́сть де́ньги. | 「君」の生格形 тебя́ |
僕は君について考えている。 |
Я ду́маю о тебе́. | 「君」の前置格形 тебе́ |
僕は君と暮らしたい。 | Я хочу́ жи́ть с тобо́й. | 「君」の造格形 тобо́й |
日本語の場合は、「君」の後ろに「が」や「を」などの助詞で格を示せば、文意が伝わる。
ロシア語の場合は、文意を伝えるためには、名詞の語尾を変化させて格を示さねばならない。
格を示すための語尾変化を「格変化」と呼ぶ。
格変化の種類は6つ、主格、対格、与格、生格、前置格、造格である。
以下の表は、日本語母語話者から見た、ロシア語の格変化に対するイメージである。
かなり誤解を生みそうではあるが、入門段階では以下のようにイメージしておけばいいだろう。
格変化形 |
日本語の助詞から考えた、ロシア語文型内での格の特徴。 |
主格形 |
「~が」で、行為の主体であることを示す形。文の主語。辞書掲載時の基本の形。 |
対格形 |
「~を」で、行為の対象であることを示す形。直接目的語。主格と同形(例外有) |
与格形 |
「~へ」で、行為の方向であることを示す形。間接目的語。 |
生格形 |
「~の」「~は」で、「人の物」「人は物がある」など、所有などを表す形。 |
前置格形 |
「~に」「~で」で、行為の場所「で」、存在の場所「に」などで現れる形。 |
造格形 |
「~と」「~で」で、「人と一緒に」、「道具で」と言うときの形。 |
品 詞;動詞、名詞、形容詞…など
品詞の種類;動詞、名詞、形容詞、副詞、前置詞、疑問詞、接続詞
動 詞
動詞の語尾は以下の3つの要素で語尾が変化する。
1)基本活用形;主格の人称・性・数による語尾変化
2)過去形;主格の性数による語尾変化
3)命令形;親しい相手か尊敬対象かによる語尾変化
例)愛している люби́ть
一人称単数形 |
二人称単数形 |
三人称単数形 |
一人称複数形 |
二人称複数形 |
三人称複数形 |
люблю́ | лю́бишь | лю́бит | лю́бим | лю́бите | лю́бят |
男性名詞が主格の |
女性名詞が主格の |
中性名詞が主格の |
複数名詞が主格の |
君に対する |
あなた(達)に対する動詞の命令形 |
люби́л | люби́ла | люби́ло | люби́ли | люби́ | люби́те |
※注意;相手に丁寧口調で話すとき、たとえ相手が一人であっても、二人称複数形(敬称)のほうを使う。
名 詞
全ての名詞は、男性、女性、中性のいずれかの性に分類される。
この区別は、あくまでも「文法上の性」であり、実際の生物的な性とは切り離して考えるべきである。
名詞の文法上の性は、さらに単数形と複数形があり、それぞれ格変化する。
例)国(女性名詞);страна́
主格形 | 対格形 | 与格形 | 生格形 | 前置格形 | 造格形 | |
単数形 | страна́ | страну́ | стране́ | страны́ | стране́ | страно́й |
複数形 | стра́ны | стра́ны | стра́нам | стра́н | стра́нах | стра́нами |
形容詞
修飾する名詞の性と数と格に応じた形に変化する。
例)その э́тот
主格形 | 対格形 | 与格形 | 生格形 | 前置格形 | 造格形 | |
男性修飾形 | э́тот | э́тот | э́тому | э́того | э́том | э́тим |
中性修飾形 | э́то | э́то | э́тому | э́того | э́том | э́тим |
女性修飾形 | э́та | э́ту | э́той | э́той | э́той | э́той |
複数修飾形 | э́ти | э́ти | э́тим | э́тих | э́тих | э́тими |
例)その+バス (男性名詞) |
э́тот авто́бус |
例)その+車 (女性名詞) |
э́та маши́на |
例)その+タクシー(中性名詞) |
з́то такси́ |
例)それらの+バス(複数名詞)と |
э́ти авто́бусы и э́ти маши́ны и э́ти такси́ |
副 詞
語形変化なし。動詞や形容詞を修飾する。時や場所、程度などを表す。
例)вчера́ きのうзде́сь ここでо́чень とても
前置詞
前置詞の後ろに続く名詞と一体となって語句となる。語句内の名詞は格変化する。以下、一例。
・в+名詞前置格形 ;(行為の)場所で
・в+名詞対格形 ;(移動の)場所の方へ
・к+名詞与格形 ;(人の居る)方へ
・с+名詞造格形 ;~と共に
・без+名詞生格形 ;~無しで
※注意;前置格形だけは常に前置詞と共に用いるが、他の格については、必ずしも前置詞と共に用いるわけではない。
疑問詞
以下のロシア語文の方の、文頭の単語は全て疑問詞である。
・それは何ですか? |
Что́ э́то?
Кто́ о́н? |
※注意;это は名詞で、形容詞の этот とは別物。
疑問詞の中にも、名詞的なもの、形容詞的なもの、副詞的なものに分かれる。
・名詞的疑問詞 ;「誰」「何」などは、名詞の格変化をする。ただし複数変化はない。
・形容詞的疑問詞 ;「どんな」などは、形容詞と同様の変化をする。
・副詞的疑問詞 ;「いつ」「どこで」などは、普通の副詞同様、変化をしない。
例)何 что
主格形 | 対格形 | 与格形 | 生格形 | 前置格形 | 造格形 | |
何(単複無し) | что | что | чему́ | чего́ | чём | чем |
例)どんな какой
主格形 | 対格形 | 与格形 | 生格形 | 前置格形 | 造格形 | |
男性修飾形 | како́й | како́й | како́му | како́го | како́м | каки́м |
中性修飾形 | како́е | како́е | како́му | како́му | како́м | каки́м |
女性修飾形 | кака́я | каку́ю | како́й | како́й | како́й | како́й |
複数修飾形 | каки́е | каки́е | каки́м | каки́х | каки́х | каки́ми |
接続詞
そして иしかし ноそれとも и́лиんー ну・・・など。
文 型その2;有無、許可、お願い
旅行会話で、下の3つの文型は非常に役に立つ。
・ 私には…があります。 |
У меня́ е́сть .... |
私には…があります。 У меня́ есть ....
Q:あなたはチケットがありますか? |
У вас есть биле́т? |
・Уは前置詞、меняは「私」の生格形, 二つあわせて「私には」という意味の語句となる。
「私」の部分を、「あなた」や「彼」、「先生」などの名詞に入れ替えることも可能。
・естьは、「ある」と言う意味の動詞。疑問文のときは、この単語のアクセントを強めて言う。
・否定文で「ない」と言う場合は、нет (нет естьとは言わない)と言えばよい。
・「…」部分は、この文の主語なので、人や物など名詞の主格形(つまり、原形)を置く。
…してください。 動詞の命令形+ ,пожа́луйста!
例)すみません、トイレはどこですか? Извини́не, где туале́т?
例)どうか、教えてください。 Скажи́те, пожа́луйста!
・Извинитеは、「許す」という動詞の命令形であるが、日常的な使われ方からすると、日本語の「ちょっとすみません」くらいがちょうどよい訳語となる。
・пожалуйста! を加えて言えば、頼み方の口調がより丁寧となる。
…してもいいですか? Мо́жно...?
例)いいですか? Мо́жно?
例)注文してもいいですか? Мо́жно заказа́ть?
例)Q : これ、いいですか? Мо́жно э́то?
例)A : はい、どうぞ。 Да, пожа́луйста
・状況で察しがつくのなら、動詞をつけずにただMожно?と言えばよい。
・動詞をつけて言う場合は、можно の後ろに動詞の原形をつけて言う。
・例えば、買い物で何か欲しいものを指し示すときは、можноの後ろに指示名詞をつけて言う。
・пожалуйста は、他人に何かを譲るときに言う「どうぞ」としても使えるし、
相手からの感謝に対する返答で「どういたしまして」と言うとしても使えるし、
他人に何かお願いするときに言う「どうか~してください」としても使える。
・ちなみに、можно は副詞である。